大手前大学 通信教育部(通信制大学)の俳句と川柳

俳句と川柳

※下記の科目詳細は2018年度開講科目です。

基本情報

単位数 2単位 授業方法 メディア授業

授業内容

 俳句がたぶん世界最短の「まじめな」詩であることは、よく知られている。とはいえ、それが現にどれほど短いかについては、日本人自身でさえ、本当によく実感しているとは言いがたい。西洋では、俳句はわずか三行の極端な短詩だと見なされている。たしかに西洋では、もっとも短い「まじめな」定型詩でも十四行の長さをもつのだから、たった三行といえば、とんでもなく短い詩には違いない。だが実は、日本語俳句の五・七・五音、あわせて十七音は、英語やフランス語など西洋の言語の情報量に換算すれば、ほんの十音節にも足りない。つまり俳句は、西洋詩のわずか一行よりもっと短い詩なのであり、これは極端に短い諺か、コマーシャル・メッセージなみの信じがたい短小さである。「閑(しづか)さや岩に浸(し)み入る蝉(せみ)の声」――ほとんど意味不明の片言(かたこと)に近いこのようなテクストが、そもそもどのようにして「詩」であり得るのか、なぜ複雑微妙な意味をはらんで、読者に深い感動を与えるのだろうか。この講座では、芭蕉の名句の数々をじっくり読み味わいながら、そうした俳句の不思議な成り立ちとしくみを、一から考え直してみたい。あわせて、たぶん世界最短の「おかしい」詩である川柳についても、同じ観点から、あらためて見直すことを目標とする。

 同じ五・七・五の短詩でも、俳句は季語と切字を含む芸術的な自然詩、川柳はそのどちらをも含まない軽快なユーモア詩・人情詩というのが一般的な見方であろう。そうした通念はおおむね当たっている。とはいえ、俳句と川柳がこれまでたどってきた歴史を考えても、またどちらもわずか十七字の極端に短い詩だという点から見ても、両者には意外に多くの共通点がある。この二つをはじめから別物だと決め付けず、むしろ兄弟のように近いもの、一本の木の枝分かれしたようなものと考えて、それぞれに似たところや異なるところを観察してみれば、色々とよく見えてくるものがありそうである。

 本授業では、俳句と川柳の成り立ちや発展のあとをたどりながら、それぞれの詩としての特性を考え、あわせて俳句・川柳の古今の名作をじっくり味わうことができるようになる。

科目情報

学習内容 概要

第1回 十七字の世界

第1節 俳句の短さ
第2節 ハイクとイマジズム

第2回 読者は作者

第1節 俳句は脇が甘い
第2節 開かれた作品

第3回 写生

第1節 リアリズム(写実主義)
第2節 俳句は十七字が出発点

第4回 本意の働き

第1節 歌語とコノテーション
第2節 季語、俳言

第5回 秋の夕暮

第1節 『万葉集』の「秋の夕暮」
第2節 『古今集』「秋の夕暮」
第3節 『後撰集』以降の「秋の夕暮」
第4節 『新古今集』の「秋の夕暮」と「三夕」

第6回 俳句の二重構造

第1節 滑稽の本質
第2節 詩的意義と文体特徴

第7回 誇張―表現・意味の構造(1)

第1節 「も」考
第2節 「も」以外の誇張

第8回 矛盾―表現・意味の構造(2)

第1節 矛盾法(1)
第2節 矛盾法(2)
第3節 矛盾法(3)

第9回 意義の方向づけ

第1節 干渉部の働き(1)
第2節 干渉部の働き(2)

第10回 「閑かさや」の句

第1節 「岩にしみいる蝉の声」
第2節 「閑かさや」

第11回 俳句の翻訳

第1節 俳句の翻訳における問題点
第2節 様々な俳句の英訳

第12回 芭蕉の桜

第1節 ミモロジスム
第2節 「花」と「桜」

第13回 川柳とは

第1節 川柳の成り立ち(1)
第2節 川柳の成り立ち(2)

第14回 川柳の構造

第1節 川柳の構造(1)
第2節 川柳の構造(2)

第15回 川柳の名作

第1節 川柳を楽しむ(1)
第2節 川柳を楽しむ(2)