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看護学とは?学問の内容や進路について解説
※2024年10月30日現在の内容です
看護学とは?学問の内容や進路について解説
看護とは、病気やケガなどの問題を抱える患者に向き合い、それぞれの患者の置かれている状況に応じたサポートをすることで、患者自身が自分らしく生きていくのを支えることです。
患者の中には、病気と一生付き合い続けなければならない人もいますし、怪我による後遺症に苦しむ人もいます。患者のほとんどは不安を抱え、ひどく気分が落ち込むときもあります。
こうした人々の体と心をどうケアしていくかを考えるのも、看護の大きな役割になります。
したがって看護に携わる者には、さまざまな病気やケガ、心に関する知識はもちろん、老若男女といった人の発達段階や性差に関する知識や、患者との接し方など、幅広い知識・技能が求められます。
こうした知識・技術を体系的に習得できる学問領域が看護学なのです。
看護学とは?
看護学は、看護の方法を理論と実践の両面から探究する学問です。大学では、研究や臨床に基づいて構築された看護の具体的な技術や知識を習得していくことになります。
看護学の研究分野は、実際の看護法などを研究する「基礎看護学」や、患者の精神的なケアの研究をする「精神看護学」などがあり、それぞれ成人・小児・母性・老人を対象とした看護学に分けられています。
また、近年では超高齢化が進んでいる影響もあり、地域社会での健康・保健問題と、援助の具体的方法を研究する「地域看護学」や「在宅看護学」といった学問領域も注目を集めています。
看護学で学ぶ内容
看護学を学ぶ上で重要なことは、人についての理解を深めることです。
そのために、大学ではまず心理学、倫理学、教育学、哲学、生物学、化学など、人文学・自然科学の幅広い分野の知識習得をめざします。
次に、専門領域を学ぶための基礎として、医療や人体に関わる知識を身につけます。
学びの領域は医学や薬学をはじめとして、解剖学、病理学、生理学、栄養学、福祉学など多岐にわたりますが、一人ひとり事情が異なる患者と向き合い、支えていくためには欠かせない知識です。
基礎を習得した後は、専門科目を学びます。
基礎看護学、精神看護学、小児看護学、老年看護学とさまざまな分野があり、学生は自身の志望進路に応じた分野を選択し学びを深めます。
看護実習
看護実習では病院や診療所、福祉施設に配属され、まずは施設見学やオリエンテーションなどを経て、徐々に本格的な実習へと進んでいきます。
実際に患者を担当することになりますが、教員や先輩看護師の指示に従うだけではなく、自分で判断しなければならない場面もあります。
また、実習中には毎日実習記録をつけることになります。担当している患者の様子や対応、気づいた点などを記録していき、看護教員や先輩看護師にチェックを受けます。
患者の安全を守るだけでなく、自分自身を客観視し、成長していくために必要なのです。このような実習を通じて、講義で学んだ知識や技術を医療の現場で実践していくなかで、看護師に必要な能力を養います。
卒業資格を得ると、看護師の国家資格試験の受験資格が得られます。
試験は毎年2月の第2週ごろに行われ、看護学を学んだほとんどの学生は、4年生の秋ごろまでに国家試験に向けた勉強を始めます。
四年制大学の看護学生の実習期間・実施される時期 ※実施時期の詳細は学校によって異なるので、あくまで参考程度に留めてください。
四年制大学の場合、1年生の9月ごろに「基礎Ⅰ実習」が実施されるのが一般的です。期間は約1週間で、はじめての実習ということで英語や情報リテラシーなど看護や医療以外の一般教養がメインとなります。
また、学内演習を前期から週1回程度で行うのが一般的で、学生同士で基本的な看護技術を体感しながら身につけていきます。
2年生は5月から7月あたりに「基礎Ⅱ実習」があり、期間は約2週間となります。内容は医学や薬学、患者のライフステージに応じた看護などを学ぶ座学が中心です。
大学によっては、「基礎Ⅰ実習」を2年生に進級してから行う場合もあります。
3年生では、前期に領域実習に必要な知識を学び、後期からは「領域実習」に取り組みます。
いずれの領域を選択した場合も一回の実習期間は約2~3週間が一般的で、これを複数回に分けて行います。
実習の前に学内オリエンテーションが行われるのが一般的な流れで、そこで実習の目的や注意点等を確認していきます。
4年生は前期に「領域実習」、後期には「統合実習」が実施されます。
「領域実習」の期間は3年生から合わせて約1年、「統合実習」は約1週間の実習を2回にわけて行います。統合実習が終了すると、卒業研究や国家試験対策が始まります。
三年制専門学校の看護学生の実習期間 ※実施時期の詳細は学校によって異なるので、あくまで参考程度に留めてください。
三年制専門学校の場合、1年目は「基礎Ⅰ実習」「基礎Ⅱ実習」が行われるが一般的で、実習期間は、「基礎Ⅰ実習」が約1週間、「基礎Ⅱ実習」が約2週間となります。
一般教養の講義はほとんどなく、はじめから看護学や医学概論を学び始めます。
2年生になると「領域実習」が始まります。
10月ごろから実習を開始するのが一般的で、実習期間の合計はおよそ8週間と、四年制大学より期間が長く設定されています。
3年生では約10週間をかけて「領域実習」に取り組み、続けて「統合実習」が約2週間行われます。
三年制の専門学校は実習期間が長いため、実習や講義の合間に少しずつ国家試験対策も進めていかなくてはなりません。
看護学を学ぶのに向いている人
看護学を学ぶ上でまず必要となるのは、人が好きだと言う気持ちです。
人の役に立ちたい、助けになりたいという人が好きだという気持ちが強い人ほど、学び続ける意欲を持ち成長していくことができるでしょう。
また、看護には主体性も求められます。患者の中には医師が苦手な人や、コミュニケーションがうまくとれない人もいます。
そうした人としっかり向き合い、何を求めているかを理解するためには、積極的に働きかける必要があります。主体的に考え、行動する能力も看護に必要な素養といえるでしょう。
さらに、看護学を志すうえで今後はリーダーシップも必要とされるでしょう。
看護学はまだまだ歴史の浅い学問であり、病院ごとのルールも少なからずあるため、看護師が能力を十全に発揮できない場合もあります。
高齢化社会が進み、医療システムが転換を求められる時代だからこそ、看護の新しい在り方を模索し、主導していける人材が必要とされているのです。
このように看護に求められる能力はさまざまありますが、そのすべてを完璧に兼ね備えていなければならないというわけではありません。
近年では、男性の看護師も少しずつ増えています。男性特有の疾患もありますし、入院生活を送る男児にとっては男性看護師がいることが成長に良い影響を与える場合もあります。
男性でも女性でも、誰もが能力を発揮できるのが看護師という職業なのです。
では、具体的にどういう人が向いているのかを具体的に見ていきましょう。
責任感が強い人
看護師という仕事は、当然ながら命を扱う職業です。小さなミスであっても、患者さんにとって命取りとなる事態を引き起こしかねません。
自分の行動に責任を持ち、ミスがないかをしっかり確認する心構えを持つ姿勢が必要なのです。
効率的に業務を処理できる人
一刻を争う事態が起こり得るのが医療の現場ですから、適切かつ効率的に業務を行う能力も必要です。
状況に応じた判断と対応を日頃から磨いておくことも、看護師に必要とされているのです。
体力があり、クヨクヨしない人
看護師は夜勤業務もあるため生活が不規則になりやすく、業務内容も多岐にわたりますから、体力は不可欠です。
また、多くの人と接する職業ですから、時には心無い言葉をぶつけられることもあります。
そうした困難にめげず、むしろはねのけるくらいのタフさがある人は看護師に向いているでしょう。
コミュニケーション能力が高い人
看護師は患者と向き合うだけでなく、医師や他の専門スタッフと協調して働くことになります。
他のスタッフの指示や要請をしっかり聞き、理解することももちろん必要ですが、患者やその家族の要望などを伝えなければならない場面もあります。
こうしたコミュニケーションが苦にならない、協調性がある人は仕事をスムーズに行えるでしょう。
向上心が高く、柔軟な思考がある人
医療の現場は、医学や看護学の発展とともにつねに変化しつづけています。
経験を積むことはもちろん重要ですが、新たな知識や技術を学ぶことに意欲的で、変化を受け入れることのできる人は、より成長していけるでしょう。
看護学を学んだ後の進路
卒業後の進路
看護学を学び看護師資格を取得した人は、病院勤務の看護師以外にも、保健師、助産師などさまざまな職場で働くことができます。
また、⼤学院や通信教育などで専門性を高め、学位を取得すれば、⼤学教員や研究者、専⾨看護師や認定看護師への道を拓くこともできます。
産業看護師
産業看護師とは一般企業で働く看護師のこと。社員の怪我への対応や体調管理だけでなく、社員のメンタルケアを行う場合もあります。
従業員の健康に関するデータを取り扱うため、データ処理や事務作業が得意な人が向いているでしょう。
保育園や幼稚園
保育園や幼稚園で看護師を募集する場合もあります。
主な業務は子どもたちの健康管理や、看護師の立場から、保護者へアドバイスを行います。
小さな子どもは体調を崩しやすいため、細かく向き合う必要がありますが、子どもが好きだという人に向いている仕事です。
医療機器メーカー
専門知識を求められる医療機器メーカーに就職し、製品の営業やサービスのサポートを行うフィールドナースも選択肢のひとつです。
製品のプレゼンテーションや医療機器のデモンストレーションなど、学校では学べない営業スキルなども必要ですが、一般企業でしっかり働きたいと考える人に向いています。
献血ルーム
献血ルームでは、採血の担当や医師のサポートを行います。
夜勤がないため、仕事とプライベートを分けたい人にも向いていますが、事務作業は必要になります。
日本赤十字社が全国で展開している各地の赤十字血液センターで採用情報を確認することができます。
介護施設
介護士と連携しながら入居者のケアや健康管理を行います。
特に近年では少子高齢化が進んでいるため、介護施設を含めた高齢者への需要は高まっていくことが予想されています。
人とのコミュニケーションが好きで、高齢者と向き合うのが上手い人に向いています。
保健師
保健所や保健センターなどで地域住民の相談に乗り、健康管理を行うのが保健師です。
保健師をめざすには、まず看護師資格を取得したうえで、保健師国家試験に合格する必要があります。
公務員として行政機関に所属するほか、産業保健師や学校保健師などの道もあり、病院保健師として看護師業務と兼務する場合もあります。
助産師
妊娠中から出産時、そして育児に至るまで母子の健康をサポートするのが助産師です。
助産師になるには、看護師資格の取得したうえで助産について専門的に学び、助産師国家試験に合格する必要があります。
助産師となった後は産院や総合病院、診療所などで勤務します。
専門看護師(CNS:Certified Nurse Specialist)
専門看護師(CNS)とは、特定の専門看護分野において高度な看護実践能力を有する看護師を指します。
専門看護師になるためには、看護師資格を取得したうえで、日本看護協会が定める14個の専門看護分野から希望の分野を選択して専門的に学び、試験に合格しなければなりません。
認定看護師
認定看護師とは、特定の看護分野において熟練した看護技術と知識を有する看護のスペシャリストです。認定看護師になるためには、通算5年以上(うち3年は認定看護分野)の実務経験をもち、さらに専門分野に応じた認定看護師教育機関で所定の課程と特定行為研修を修了し、認定審査に合格する必要があります。
看護学を学ぶ大学選びのポイント
看護師になるためには、国が認めた大学や短大・専門学校などに通い、看護師養成課程におけるカリキュラムを修了したうえで、国家資格である「正看護師」の資格を取得する必要があります。
どの学校を選んでも資格を取得することはできますが、四年制の大学と三年制の専門学校ではカリキュラムの内容も進め方も異なります。
まずはそうした違いを知り、自分に向いた進路を選びましょう。
総合大学と医療系大学の違い
総合大学は、教養科目の選択肢が多く、他学部生との交流など、さまざまな知識に触れる機会が多いのが特長です。
学習環境だけでなく、食堂、図書館、運動施設なども充実しています。また、大学独自のイベントなどの規模も大きく、にぎやかなキャンパスライフを送ることができるでしょう。
医療系大学は、「医療に携わりたい」という同じ志を持った学生たちが集まる場です。
国家試験合格という目標が明確なため、友だちと競い合いながら集中して学ぶことができます。
また、卒業後のキャリア支援などのフォロー体制がしっかりしていることが魅力です。
実習先が就職につながるということも多いので、大学とつながりの深い病院を調べておくことが大切です。特に附属病院がある大学とない大学では異なるメリットがあります。
附属病院がある大学は、実習に通いやすいことがメリットです。
実習期間中でも、気になることがあれば大学の図書館で調べ物をすることができます。
また、将来働くことになるかもしれない病院の雰囲気を早めに知ることができるのも大きなメリットでしょう。
附属病院のない大学では、実習は多様な病院で行います。
在学中にさまざまな病院で経験を積むことができるため、自分に合った病院や働きかたを検討することができます。
総合大学、医療系大学のいずれを選んでも、卒業すれば「学士」の学位を得ることができ、大学院を受験する資格が得られます。
より専門性を深めたい人や研究職へ進みたい人は、大学を選択すると良いでしょう。
大学によって異なりますが、看護師受験資格だけでなく、保健師受験資格など、他の資格を取得できる可能性も広がります。
大学選びのポイント
進路がある程度絞れたら、以下のポイントを参考に、自分に最もあった大学を選びましょう。
通いやすさ
大学での勉強や実習は精神的にも肉体的にも負担が大きいため、日々の通学の負担はなるべく減らしておくのが望ましいです。実家から通う場合はもちろん、一人暮らしを始める場合も、学校周辺の交通事情などを加味して考えましょう。
学費
学費の高い学校は優秀な講師が在籍していたり、学習設備が充実していることも多いため、学費のみで判断することはできませんが、学費は大学を選ぶ際には欠かせない重要な条件です。
家族としっかり話し合うだけでなく、奨学金制度についても調べておくといいでしょう。
国家試験対策
国家試験対策に力を入れている学校かどうかというのも重要なポイントです。学校が公開している看護師国家試験資格合格率などの情報を参考に、どのような試験対策をしているのかを調べておくといいでしょう。
現役看護師さんに聞いてみました!
四年制大学の卒業が必要だと思ったことはありますか?
- 民間病院 看護主任 40代女性
ある。経験だけでは、判断の深み欠けると思う。 - 民間病院 看護スタッフ 30代女性
この先大学教員の道も考えたとき。大学院進学となると四年制大学の卒業が必要になる。 - 有料老人ホーム 看護スタッフ 50代女性
患者さんの気持ちをもっと知るために、大学で心理学を学びたいと思ったとき。 - 民間病院 看護スタッフ 30代女性
同期とまったく同じ仕事内容(むしろ私のほうが忙しい)なのに給料に差があると知ったとき。 - 公立病院 看護スタッフ 20代女性
ある。大卒じゃなくて困ることはないものの、もっと幅広い知識があればと思うことがある。
大手前大学 通信教育学部で学ぶ看護学
大手前大学 通信教育部では、正科生の課程修了時に「学士(学術)」の学位を得ることができます。「学士」とは大学教育を修めた証であり、専門課程の専修学校(専門学校)卒業時に授与される「専門士」と比べ、より幅広い学問を修めたという証明になります。そのため、転職やキャリアアップに役立つこともあります。さらに、「学士(看護学)」の学位を得られる「看護学プログラム」※もあり、課程修了者は認定看護師や専門看護師への道を拓くことができます。
※「学士(看護学)」は、独立行政法人学位授与機構が授与するものです。取得するためには、卒業後に必要な手続きを行う必要があります。
就職・転職に有利に
「学士(看護学)」の学位は、毎年約2500人が取得されると言われています。これに対して、2022年厚生労働省の看護師合格者数は約6万人。
つまり「学士(看護学)」の学位を取得されている方は希少な人材として高評価や優遇される可能性が高いと考えられます。転職の際にも、評価のポイントとなるため転職先が選びやすくなるメリットもあります。
給与・待遇アップも可能
「学士(看護学)」の学位を取得後、認定看護管理者の資格を取得すれば、看護師長・看護部長など管理職への道もあり、給料アップが確実に期待できます。