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専門看護師とは?資格取得から役割まで詳しく解説

※2024年10月30日現在の内容です

専門看護師とは?資格取得から役割まで詳しく解説

看護師の画像

看護のエキスパートとして専門性を高めたい人にとって、選択肢の一つとして挙げられるのが「専門看護師」です。
当然ながら資格取得までの道は楽ではありませんが、専門看護師になれば、特定分野の専門家として活躍の幅は格段に広がります。

ここでは、「そもそも専門看護師とは何か」といった基本的なところから、「認定看護師とどう違うのか」「資格取得でどんなメリットが得られるのか」「どうしたら専門看護師になれるのか」といった疑問にお答えしていきます。

専門看護師とは?

専門看護師は、水準の高い看護を効率よく行うための技術と知識を深め、卓越した看護を実践できると認められた看護師です。
14の専門分野が設けられており、専門看護分野ごとに日本看護協会が認定しています。英語ではCertified Nurse Spacialist(CNS)と表記します。

専門看護師の6つの役割

日本看護協会では、専門看護師が果たす役割について、以下の6項目を挙げています。

  1. 個人、家族及び集団に対して卓越した看護を実践する。(実践)
  2. 看護者を含むケア提供者に対しコンサルテーションを行う。(相談)
  3. 必要なケアが円滑に行われるために、保健医療福祉に携わる人々の間のコーディネーションを行う。(調整)
  4. 個人、家族及び集団の権利を守るために、倫理的な問題や葛藤の解決を図る。(倫理調整)
  5. 看護者に対しケアを向上させるため教育的役割を果たす。(教育)
  6. 専門知識及び技術の向上並びに開発を図るために実践の場における研究活動を行う。(研究)

参照:『専門看護師』(日本看護協会・https://www.nurse.or.jp/nursing/qualification/vision/cns/index.html

つまり、専門看護師は専門分野での患者・家族に対する現場でのケアだけを行うわけではありません。
問題解決に向けたコーディネート能力や、後輩看護師の教育、専門分野に関する研究など、専門分野に関わる看護の質の向上に貢献するという役割が求められているのです。

認定看護師との違い

看護のスペシャリストとして「専門看護師」と並んであげられるのが「認定看護師」です。どちらも似たイメージがありますが、この二つはどう違うのか、ここで整理しておきましょう。

専門看護師と認定看護師の違い

項目 専門看護師 認定看護師
求められる役割 実践、相談、調整、倫理調整、教育、研究 実践、指導、相談
専門分野 14分野 19分野(※1)
登録者数 約3,300人(2023年12月現在) 約2万4,000人(2023年12月現在)
受験資格
  • 5年以上(うち3年以上は専門看護分野)の実務経験
  • 大学院修士課程修了
  • 5年以上(うち3年以上は認定看護分野)の実務経験
  • 800時間の課程と特定行為研修の修了(※2)
課程の履修期間 2年 1年以内
費用 約200万円 約100万円

参照:『専門看護師』(日本看護協会・https://www.nurse.or.jp/nursing/qualification/vision/cns/index.html)、『認定看護師』(日本看護協会・https://www.nurse.or.jp/nursing/qualification/vision/cn/index.html

※1:認定看護師制度は2020年度から、特定行為研修を組み込んだ新制度(B課程)に移行し、従来(A課程)の21分野から19分野に再編されました。従来の認定教育は2026年度に終了し、認定審査は2029年度に終了します。

※2:B課程の場合。

表を見ていただけばわかるように、専門看護師と認定看護は求められる役割が違います。まず専門看護師は、現場における看護の実践だけでなく、関係施設や地域との調整のほか、教育や研究など、対象とする分野全体での貢献が期待される資格と言えるでしょう。

一方で認定看護師は、「現場での実践」に重きが置かれています。
対象とする分野は専門看護師が14であるのに対して認定看護師は19分野と細分化されており、より専門的な看護技術・知識を生かしてお手本となることが期待されています。

専門看護師は「病院全体や地域と協働してより良い看護の仕組みづくりを行うコーディネーター」、認定看護師は「専門分野の最前線で活躍する看護のスペシャリスト」とイメージすると良いでしょう。

専門看護分野の種類一覧

医師と看護師たちの画像

専門看護分野とは、専門看護師制度委員会が「独立した専門分野として知識および技術に広がりと深さがある」と認めたものをいいます。現在は、14の専門分野があります。

専門看護分野一覧

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分野 特徴 登録者数
(2023年12月)
がん看護 がん患者の身体的・精神的な苦痛を理解し、患者やその家族に対してQOL(生活の質)の視点に立った水準の高い看護を提供する。 1,090人
精神看護 精神疾患患者に対して水準の高い看護を提供する。また、一般病院でも心のケアを行う「リエゾン精神看護」の役割を提供する。 436人
地域看護 産業保健、学校保健、保健行政、在宅ケアのいずれかの領域において水準の高い看護を提供し、地域の保健医療福祉の発展に貢献する。 32人
老人看護 高齢者が入院・入所・利用する施設において、認知症や嚥下障害などをはじめとする複雑な健康問題を持つ高齢者のQOLを向上させるために水準の高い看護を提供する。 268人
小児看護 子どもたちが健やかに成長・発達していけるように療養生活を支援し、他の医療スタッフと連携して水準の高い看護を提供する。 314人
母性看護 周産期の母子および家族への支援、女性のライフサイクル全般にわたる健康への援助等、水準の高い看護ケアを提供する。 94人
慢性疾患看護 生活習慣病の予防や、慢性的な心身の不調とともに生きる人々に対する慢性疾患の管理、健康増進、療養支援などに関する水準の高い看護を行う。 276人
急性・重症患者看護 緊急度や重症度の高い患者に対して集中的な看護を提供し、患者本人とその家族の支援、医療スタッフ間の調整などを行い、最善の医療が提供されるよう支援する。 405人
感染症看護 施設や地域における個人や集団の感染予防と発生時の適切な対策に従事するとともに感染症の患者に対して水準の高い看護を提供する。 110人
家族支援 患者の回復を促進するために家族を支援する。患者を含む家族本来のセルフケア機能を高め、主体的に問題解決できるよう身体的、精神的、社会的に支援し、水準の高い看護を提供する。 94人
在宅看護 在宅で療養する対象者及びその家族が、個々の生活の場で日常生活を送りながら在宅療養を続けることを支援する。また、在宅看護における新たなケアシステムの構築や既存のケアサービスの連携促進を図り、水準の高い看護を提供する。 127人
遺伝看護 対象者の遺伝的課題を見極め、診断・予防・治療に伴う意思決定支援とQOL向上をめざした生涯にわたる療養生活支援を行い、世代を超えて必要な医療・ケアを受けることができる体制の構築とゲノム医療の発展に貢献する。 24人
災害看護 災害の特性をふまえ、限られた人的・物的資源の中でメンタルヘルスを含む適切な看護を提供する。平時から多職種や行政等と連携・協働し、減災・防災体制の構築と災害看護の発展に貢献する。 40人
放射線看護 放射線がもたらす身体、心理社会的影響の特性をふまえ、放射線事故・災害における平時からの体制構築と健康課題を有する対象へ長期的な看護を提供する。また、放射線診療を受ける対象者とその家族へ水準の高い看護を提供するとともに、職業被ばく低減の方策等、施設における体制を構築する。 6人

参照:『専門看護師』(日本看護協会・https://www.nurse.or.jp/nursing/qualification/vision/cns/index.html)、『都道府県別登録者数一覧(2023年12月)・https://www.nurse.or.jp/nursing/qualification/vision/cn/bunyatodofuken_tizu_cn.html

専門分野は専門看護師制度委員会の審議を経て、新たに追加される可能性があります。進みたいと思っている専門分野が上記に含まれていない方も、定期的に情報更新を確認しておきましょう。

資格取得のメリット

資格を取得して専門看護師になることで、収入や働き方、仕事内容などはどのように変わるのでしょうか。ここでは資格取得で得られるメリットについて解説していきます。

収入

日本看護協会が2022年に実施した調査によると、専門看護師に対して資格手当を実施すると回答している医療機関は34.1%で、「毎月支払われる」場合の平均支給額は、11,279円となっています。十分に評価されているとは言い難い状況ではありますが、資格手当の代わりに昇給や昇進などの待遇を用意している機関もあるため、職場に確認してみると良いでしょう。

参照:『2022年度専門看護師・認定看護師に対する評価・処遇に関する調査』(日本看護協会・https://www.nurse.or.jp/nursing/home/publication/pdf/report/2022/cn_a_asntre_report.pdf

待遇

上記の調査報告によれば、専門看護師の93%は「正規雇用職員」として働いています。
また、勤務先として最も多いのは「病院」で82.3%、そのうち500床以上の病院に勤務している看護師は55.2%、次いで400~499床以下が18.3%です。
職位は管理職が8.1%、中間管理職が43.1%で両方を合わせると51.2%となっています。

つまり専門看護師の多くは大病院に勤務しており、そのうちの半分以上が管理職として働いているということになります。大きな病院ほど専門看護師への評価が高く、キャリアアップしやすい傾向にあると言えるでしょう。

参照:『2022年度専門看護師・認定看護師に対する評価・処遇に関する調査』(日本看護協会・https://www.nurse.or.jp/nursing/home/publication/pdf/report/2022/cn_a_asntre_report.pdf

働き方

病院で働く専門看護師のうち、主な所属先は病棟が32%、外来が25%、看護管理部・室が18%となっています。専門性を活かせる部署に軸足を置きながら、教育役や調整役などの役割を期待されている表れと言えるでしょう。
調整役としての活動は日中がメインになるため、病院によっては夜勤を免除するケースもあるようです。
「在宅看護」「がん看護」の専門看護師では、訪問看護ステーションや病院の在宅部門で活躍する方もいます。

また、看護系教育研究機関に所属して教育や研究に携わる専門看護師も多くいます。専門看護師となることで働き方の選択肢が広がっていると言えるでしょう。

参照:『2022年度専門看護師・認定看護師に対する評価・処遇に関する調査』(日本看護協会・https://www.nurse.or.jp/nursing/home/publication/pdf/report/2022/cn_a_asntre_report.pdf)『病院勤務者の分野別所属部署別登録者数一覧(2023年12月)』(日本看護協会・https://www.nurse.or.jp/nursing/assets/cns4_2023.xlsx)

転職や再就職が有利に

専門看護師が持つ高度な看護実践力やコーディネート能力、教育力は多くの医療機関が必要とするものです。転職時や・復職時にも資格が有利に働く可能性は高いと言えるでしょう。転職・復職により、より良い待遇を期待することもできます。

専門看護師になるには?

専門看護師になるには、看護系の大学院で所定の課程を修了する必要があります。これには最低でも2年間かかります。
また、大学院に入学するためには四年制大学卒業の学位が必要ですから、専門学校や短期大学を経て看護師になった人は、まず大卒資格を取得しなければなりません。

専門看護師への道を示した図

資格取得にかかる費用

大学院修士課程(2年間)の学費は、国公立で約135万円程度、私立の場合はさまざまですが200万円程度がおおよその目安となります。このほか、教材や研修などの費用が必要になる場合があります。
また、専門看護師認定審査に掛かる費用は審査料と合格後に支払う認定料を合わせて約10万円です。

大卒資格取得をめざす場合は、大学の通信教育部に入学する費用も必要となりますので、資金計画をしっかり立てておくことが必要です。

資格取得までのスケジュール

看護大学院での修士課程を修了したら、いよいよ専門看護師となるための認定審査を受けます。専門看護師の認定審査は年1回ですので、しっかりスケジュールを確認しましょう。

認定審査のスケジュール(2024年度)

6~7月 申請(審査料振込、オンラインでの資料提出、審査書類の提出など)
9月 書類審査の合否発表
10月 筆記試験
12月 筆記試験の合否発表
翌年2月 認定証交付

詳細な日程については実施年度ごとに変更となりますので、日本看護協会にて確認してください。また、取得認定後は5年ごとに書類による認定更新審査があります。忘れずに更新してください。

参照:『2024年第34回専門看護師認定審査「認定の手引き」』(日本看護協会・https://www.nurse.or.jp/nursing/assets/qv_cns_tebiki_34th_2024.pdf

看護師をしながら大学に通える?

専門看護師になるためにはかなりの費用が掛かりますから、看護師として働きながら学びを進めていきたいという人が多いでしょう。
大卒資格については、大学が開設している通信教育を利用するのがおすすめです。通信教育であればスキマ時間を利用して効率的に学びを進めることができ、学位取得も可能です。
学費だけでなく、カリキュラムの制度や開講科目、学修サポートなどのポイントを確認して、自分に合った大学を選びましょう。

また、大学院については夜間・土日の講義実施など、社会人が学びやすい体制を整えている大学院もあるため、事前にしっかり確認しておくと良いでしょう。

大手前大学 通信教育部で看護の専門知識を学ぶ

机の上のPCとノートの画像

大手前大学 通信教育部では、看護師として働く方に向けてキャリアアップにも活かせる看護学分野の専門科目を数多く開講しています。
なお「学士(看護学)」を取得する場合、本学では以下(1)(2)のいずれかの学歴が必要です。
(1)看護系短期大学(三年制)卒業者
(2)修業年限3年以上かつ修了に必要な総授業時間数2,550時間以上の看護系専修学校専門課程修了者
※ 大学改革支援・学位授与機構の定める基礎資格「第2区分」該当者を対象としています。
詳細は大学改革支援・学位授与機構Webサイト内「新しい学士への途」の最新版をご確認ください。

 

さらに独自の「看護学プログラム」を活用すれば、「学士(看護学)」の学位取得をめざすこともできます。
また、「学士(看護学)」の学位取得に向けて、看護学コミュニティを運営しています。

 

また、通信教育部では、「大学での学び方がわからない」「学問から長く離れていたため、学修方法を今一度振り返りたい」などと大学で学びたいすべての人のために、「アカデミックスキル」科目群を設置しています。履修計画の立て方やレポートの書き方、論理的思考法など、基礎をしっかりと身につけたうえで、他の科目を学修できます。

大手前大学 通信教育部で開講している専門科目

社会のグローバル化に対応した看護師をめざすための「国際看護学」や、高齢化社会でニーズが高まる「家族看護学」、災害医療や災害看護を学び防災・減災対策をめざす「災害看護学」など、時代や社会の変化に対応した専門科目を開講しています。

国際看護学

グローバル化が進む世界の保健医療の実態と多様性について学びます。

看護と東洋の知恵

漢方医学を中心とした授業で、東洋の医学における看護の役割について理解を深めます。

多文化社会と医療

国内外の事例などから実践的な知識を学び、多文化社会での医療を考えます。

看護と人間の生涯発達

看護職者として、対象者の発達段階をふまえ、“生涯発達”の視点で多角的·長期的な思考力を養います。

歯科保健と看護

口腔保健の基礎や、ライフステージごとの歯科保健と口腔ケアの知識を学び、看護ケアにおける実践力を養います。

看護栄養学

ライフステージごとの健康増進と生活習慣病や疾病の重症化を予防する食支援を学び、看護ケアにおいて実践できることをめざします。

性(セクシュアリティ)と看護

Sexual and Reproductive Health/Rights(SRHR)について理解し、多様な人間理解に基づいた看護実践をめざします。

家族看護学

家族看護の基本的な考え方と家族看護理論、家族看護過程について体系的に学びます。

災害看護学

災害医療·災害看護の実践、備えの必要性を理解し、各自で防災·減災対策の備えができることをめざします。

看護イノベーション学

多様化する社会の健康課題について看護業界のイノベーターからさまざまな実践を学びます。

人間関係の小児看護論

家庭や医療、教育など、こどもと関わるさまざまな分野において、看護職として今、どのようなケアが必要なのか考えます。

美容医療と看護

基本的概念や歴史、変遷を学び、美の多様性について考察するなど、新しい美容医療とその看護における価値の創造をめざします。

大手前大学 通信教育部で学ぶメリット

大手前大学 通信教育部は授業も試験も、オンラインで完結しているため、通学なしで卒業することができます。学修計画も年4回変更できるので、異動などがあってもムリなく学びを継続することができます。
また、学歴に応じた多様な入学区分があるのも特長です。専任教員と専任アドバイザーが学修をサポートしており、学修面の疑問点だけでなく、学修計画の相談などにも対応いたします。

その後のキャリア展開

大手前大学 通信教育部では、ストレスの多い現代社会において心の問題への注目が高まるなか、心理の専門家をめざすための基礎資格として人気が高い認定心理士の資格取得が可能。認定心理士の資格は看護業務にも役立つため、キャリアアップ目的で受講される方も多数在籍しています。
また、2024年4月から制度の始まった国家資格「登録日本語教員」の資格取得もめざせる日本語教員養成課程のを受講することもでき、キャリアアップに向けた新たな選択肢を得ることができます。

「学士(看護学)」を取得すれば、認定看護師や専門看護師、認定看護管理者などの資格取得に向けた道も開けます。なお、大卒資格だけを目的するのであれば、必修科目がないため、看護学はもちろん、ビジネスやマネジメント、日本語教育など全170科目の中からそれぞれが関心のある科目を組み合わせて卒業もめざせます。