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営業・マーケティング・人間関係で使える心理学テクニック14選

「職場でもっと活躍したい」「将来のキャリアアップに向けて、役立つ知識を学びたい」「コミュニケーション力を高めたい」・・・そんな風に考えたことはありませんか?そんな方にぴったりなのが心理学です。心理学を学ぶ魅力は、幅広いシーンで学んだ知識を活かせること。人と接する機会の多い営業職の方はもちろん、マーケティングや広報などの業務でも役立つうえ、部下を持つリーダー職や管理職の皆さまにも必要な知識を身につけることができます。また、働きながらでも資格取得をめざすことが可能で、資格を取得すれば、将来の活躍の可能性を広げることができます。
そこで今回は、心理学でどういったことが学べるのか、詳しく説明していきます。この記事を読んで心理学に興味を持たれた方は、ぜひ心理学を学ぶことを検討してみてください。

行動心理学とは?

心理学について学ぶ上で、まず知っておきたいのが「行動心理学」です。行動心理学とは、人の行動を観察し、そこから心理を分析・研究していく学問で、1913年にアメリカの心理学者ジョン・ブレイザー・ワトソンによって体系化されました。
声のトーンや、目線、手の動き、声色や話し方など、さまざまな動きを元に心理を読み解く力を培うことができれば、商談を効果的に進めたり、円滑にコミュニケーションを行ったりすることができます。また、人の購買行動を読み解くことで、マーケティングなどにも活用することができます。もちろん職場内の円滑なコミュニケーションにも活かせるため、営業職やマーケティング分野だけでなく、多くのビジネスパーソンの注目を集めているのが「行動心理学」なのです。

営業で使える心理学テクニック3選

人と接する機会が特に多い営業職では、いかにお客様の信頼を勝ち得るかが成約への大きなカギとなります。また、長期間にわたって特定のお客さまの担当となることも多いため、信頼関係を維持し続けることも重要です。こうしたシーンで、心理学の知識は大きな効果をもたらします。では、具体的にどのようなものがあるのでしょうか?
ここでは、営業職の方に覚えていただきたい心理学テクニックの一部を見ていきましょう。

人と接する機会が特に多い営業職では、いかにお客様の信頼を勝ち得るかが成約への大きなカギとなります。また、長期間にわたって特定のお客さまの担当となることも多いため、信頼関係を維持し続けることも重要です。こうしたシーンで、心理学の知識は大きな効果をもたらします。では、具体的にどのようなものがあるのでしょうか?
ここでは、営業職の方に覚えていただきたい心理学テクニックの一部を見ていきましょう。

アンカリング効果

「アンカリング効果」とは、最初に提示された情報がアンカー(錨)のように意識に固定され、その後の判断に強く影響を与える心理現象です。人は無意識に最初の情報に影響されやすい傾向があるため、こうした心理を巧みに利用すれば、消費者の購買意欲を高めたり、要求を通しやすくなったりすることがあります。

CASE① 割引表示でお得を演出

ある商品の通常価格と割引後の価格が記載されていた場合。その商品の相場価格を知らなければ、最初に提示された情報(通常価格)がアンカーとなり、割引後の価格がよりお得に感じられます。

CASE② 商談に遅刻!でも信頼感アップに

商談に向かう途中で電車の遅延が発生した場合。取引先に「30分遅れます」と事前に伝えておきながらも、実際は20分の遅刻で到着したとします。すると相手は「急いで駆け付けてくれたんだ」と思い、かえって相手の心証を良くする機会となることもあります。

ただし、アンカリング効果はあくまで最初の情報が基準になることに注意が必要です。根拠のない極端な情報、商品の価値に見合わない価格設定などは、そもそもアンカーとはならず、信頼低下や交渉失敗につながってしまう場合もあります。また、扱う商品・サービスによっては景品表示法違反になる場合もあるので、注意が必要です。

ドア・イン・ザ・フェイス/フット・イン・ザ・ドア

ドア・イン・ザ・フェイス/フット・イン・ザ・ドアの図

「ドア・イン・ザ・フェイス」とは、はじめに大きな要求を拒否させた後で、本命の要求をすることで、要求を断りにくくさせるというもの。「フット・イン・ザ・ドア」は逆に、はじめに小さな要求を承諾してもらったあと、段階的に要求の内容を釣り上げていく心理テクニックです。

CASE① 「ドア・イン・ザ・フェイス」の具体例

取引先と金額や納期を交渉する場合。はじめに実現が難しい条件を出すと交渉相手は当然断ります。しかし、交渉相手は断ってしまったという心理的な負い目を感じるため、次に少し緩めた条件を提示すると、多少は厳しい条件であっても交渉に応じる場合があります。

CASE② 「フット・イン・ザ・ドア」の具体例

無料サンプルや無料体験など。気軽さにつられて試してみたところで期間限定の割引商品・サービスなどを勧められると、相手には一度承諾したこともあり、断りにくい心理が働きます。そこからさらに正式契約や長期購買契約につながる場合もあります。

どちらの場合も、相手との信頼関係はもとより、最終的に通したい要求を切り出すタイミングなども重要になります。あまり無理な要求は相手との信頼関係をも崩してしまうことになるので、注意が必要です。

ミラーリング効果

人間は、好意をもっている人のマネをしてしまう傾向にあります。また、自分の身振りや話し方、表情などをマネされると、その相手に好感を持つ傾向があると言われます。こうした心の働きが「ミラーリング効果」です。

CASE① 相手のペースに合わせて話しやすい印象を

商談の場面などでは相手と話すスピードや声のトーンを合わせると、相手に話しやすい印象を与えることができます。「マッチング」「ペーシング」とも呼ばれる手法です。

CASE② 「オウム返し」で信頼関係を構築

同じ言葉を使うことで、相手の言葉の意味を理解し共感している態度を示すことができます。「バックトラッキング」ともいわれる手法です。

こうしたテクニックはメールやチャットなどでも活用できます。文章には人それぞれの個性が表れるものですから、文章全体のまとめ方や細かい表現を相手に合わせることを意識すれば、より円滑にコミュニケーションを図ることができるでしょう。
ただし、あまりにあからさまな模倣は不快感につながる場合もあります。相手のペースに合わせ、尊重する気持ちを持ってさりげなく行うとよいでしょう。

営業力を高めるなら、心理学を味方に

ここまで営業にも使える心理テクニックを見てきました。心理学の知識は、商談の場だけでなく、長期にわたるお客さまの信頼関係の構築にも役立てることができます。

  • 営業職の方
  • 交渉に心理学を活かしたい方
  • 顧客との信頼関係を築きたい方

これらに該当する方は、ぜひ心理学を学ぶことを検討してみてください。

マーケティング/広報で使える心理学テクニック4選

消費者が商品の購入を決断するために、どのような心理が働いているのか。そこには、いくつかのパターンがあると考えられています。こうした心の動きを知ることは、マーケティング戦略を練るうえで必須の知識と言えるでしょう。ここでは、マーケティングや広報戦略にも使える心理学テクニックを紹介していきます。

ザイオンス効果(単純接触効果)

ザイオンス効果の図

「ザイオンス効果(単純接触効果)」とは、特定の人物や物事に繰り返し接触することで、好意や親しみを感じやすくなる心理的傾向を表します。こうした心理的傾向はマーケティングにも活用することができ、単に商品の広告だけでなく、ブランド価値の向上にも用いられています。

CASE① メディア広告で親近感を醸成

一定期間に繰り返し流れるテレビCMは、ザイオンス効果が表れやすい手法と言えるでしょう。また、一度Webサイトに来訪したユーザーに対して広告を表示させることができるリターゲティング広告も、同様の効果が期待できます。

CASE② SNSやメールマガジンで情報に触れる機会を増やす

企業の公式SNSやメールマガジン、ニュースレターなどもザイオンス効果が期待できます。特に人々の行動が多様化している現代においては、さまざまなメディアを通じて情報発信を行うことで、より効果を高めることができると考えられます。

ザイオンス効果は営業活動にも有効であり、頻繁にお客さまのもとに通ったり、資料を送ったりして接触の機会を増やすことで、相手は親近感を感じやすくなります。
ただし、ザイオンス効果がもっとも表れるのは10回目の接触時と言われており、以後は接触回数を増やしても効果が表れにくくなります。また、そもそも商品やサービスによい印象を持ってない人には、ザイオンス効果は表れません。やみくもに接触機会を増やすのではなく、定期的に効果の判定をするとよいでしょう。また、ブランド価値の向上に向けては、定期的に接触の機会を設けるという長期的な視点も必要となります。

カクテルパーティー効果

カクテルパーティー効果の図

騒がしい場所なのに、自分の名前や関心のある事柄については自然と耳に入り、はっきり聞き取れるという経験をした人は多いでしょう。これは脳に入ってくる情報を無意識のうちに取捨選択しているからで、こうした心理的効果を「カクテルパーティー効果」と呼びます。「カクテルパーティー効果」は聴覚だけでなく、視覚にも表れると言われています。視覚の場合は「カラーバス効果」とも呼ばれ、例えば味のある事柄は目に留まりやすいため、広告のキャッチコピーなどで活用することができます。

CASE① ターゲットに直接語りかけるコピーで、興味を引きつける

広告のキャッチコピーや商品のポップアップでは、単に商品を紹介するより、語りかけるコピーにするとよいでしょう。見る人は無意識に自分へのメッセージと思って注意を向けやすくなります。また、「〇〇業界で働くあなたに」「〇〇市在住の方必見」など、ターゲットの属性を明確に絞ることで、その属性を持つ人の関心を引くことができます。

CASE② 本人の関心ごとをそのまま広告のコピーに

「キンキンに冷えたビールをどうぞ」「つらい肩こりに悩むあなたに」など、関心を持っている事柄も見る人の注目を集めやすいとされています。今欲しいものや長年の悩み、世代特有の価値観やライフステージなどもターゲットの属性となるのです。

広告ではデザイン性なども影響するため、より高い「カクテルパーティー効果」を得ようとするならば、見る人が「自分ごと」と感じられるようなキーワードの抽出だけでなく、強調の仕方や、カラー設計なども重要です。
ただし、極端にターゲットを絞ってしまうとかえって販売機会の喪失につながってしまいますし、情報が多すぎると注意が分散して注目を集めることができません。情報の優先度を整理し、要点を簡潔に伝える工夫が必要です。

フレーミング効果

フレーミング効果の図

例えば「90%の人が効果を実感」と、「10人に1人は効果を実感できない」という文章は同じ状況を説明するものですが、読み手に与える影響は異なります。このように同じ事柄であっても、提示方法フレーム(枠組み)によって評価や判断、意思決定が変わってしまう心理的現象を「フレーミング効果」と呼びます。
なぜ「フレーミング効果」が起こるのかといえば、意思決定において人は「利益より損失を重く捉える」傾向があるからです。これはプロスペクト理論という理論で提唱されました。
こうした心理的傾向をマーケティングにも活用することができます。

CASE① ポジティブ表現で好印象に

例えば「失敗率10%」という表現では、10%の失敗に当てはまりたくないという心理が働きます。一方で、「90%が成功」という書き方であれば、ほとんどの人が成功しているから自分も成功するだろう、という印象を与えることができます。

CASE② わかりやすい表現でイメージを喚起する

「ビタミン〇〇g配合」と表現するより、「レモン〇〇個分のビタミン」と表現した方がイメージを喚起しやすくなります。また、「タウリン1g」より「タウリン1,000mg」の方がより多そうな印象を与えることができます。受け手にどのような印象を抱かせたいかを意識するとよいでしょう。

フレーミング効果の活用例はたくさんありますが、マーケティングだけではなく、日常生活でも活用することができます。「水が半分しかない」と「水が半分もある」では、後者の方がポジティブな印象になり、こうした言動を心がけることで、周囲の好感が得られやすくなるでしょう。
ただし、ポジティブな面だけを強調してネガティブな側面を伝えなければ、人によっては「不誠実」と受け取られることもあります。強調すべきポイントを整理するとともに、必要な情報はしっかりと伝えることも心がけなければいけません。

バンドワゴン効果/ウィンザー効果

「バンドワゴン効果」は、すでに多くの人が支持をしているという事実が、さらに多くの支持につながる現象を指します。例えば行列のできる飲食店を見かけると「自分も食べてみたい」という気持ちになるのは、バンドワゴン効果の一例です。
「ウィンザー効果」は、当事者からの情報より、第三者からの情報に信憑性を感じる心理的効果のことです。
厳密にはそれぞれ心理的効果が異なりますが、購買行動を促すテクニックとして、いずれもマーケティングで活用することができます。

CASE① 「顧客満足度」「導入実績」を数字で示し、人が安心感を得る仕掛けを作る

商品・サービスの広告やランディングページでは、多くの人がすでに利用し満足していることを伝えるとよいでしょう。そのデータにしっかりとした信憑性があれば商品・サービスへの信頼感が高まり、購買や契約を促す効果があります。

CASE② レビューや口コミ、インフルエンサーの推薦などで、信頼感を高める

有名人や第三者からの発信は信頼しやすいという心理効果を活かした方法です。広告はもちろん、SNSなどでも効果を発揮します。商品開発時には、SNS映えを意識することも重要で、SNSで紹介する人が増える程効果も高まります。

そのほかにも、例えば店舗内のポップアップや平積み陳列などの工夫で、多くの人から支持を受けている印象を持たせることができます。「人気No.1」などのポップを見ると、ついその商品を選びたくなる心理は誰でも経験があるでしょう。
ただし、広告などで数字を示す場合にはその根拠をしっかりと明記する必要がありますし、表現によっては景品表示法に抵触する場合もありますので注意しましょう。

マーケティングで成果を上げたい方へ

多くの人が欲している商品・サービスの開発や販売に関わるマーケティング・広報分野では、さまざまな場面で心理学の知識を活かすことができます。また、その手法も多様で、商品・サービスの特性や時期などに合わせて、適切な手法を選択することでより効果を高めることができます。特に以下の方々にはおすすめです。

  • 広告表現やコピーを磨きたい方
  • WebやSNSでの訴求効果を高めたい方
  • 顧客行動の背景にある心理を体系的に理解したい方

この分野で活躍したい方は、ぜひ心理学を学ぶことを検討してみてください。

人間関係/チームづくりで使える心理学テクニック7選

日常の業務のなかで、コミュニケーションに悩む方は多いでしょう。お客さまとの関係はもちろんですが、同僚や上司・部下と良好な関係を築くことは、ビジネスを円滑に進めるうえで不可欠です。特にリーダー職にとっては、部下や後輩のモチベーションを向上させることが業務全体の生産性にも直結するため、無関心ではいられないテーマの一つでしょう。ここでは、人間関係やチームづくりで使える心理学テクニックをご紹介いたします。

ハロー効果

ハロー効果の図

「ハロー効果」とは、先入観や周囲の環境、思い込みなどによって非合理的な判断をしてしまう認知バイアスの一種とされています。「ハロー(halo)」とは後光や光輪などの意味であり、太陽を見ると光輪の分だけ大きく見えるように、一部の特長に引きずられて、過大もしくは過少に評価してしまう状態を指します。

CASE① 印象に頼らない人事評価を築く

面接時に「仕事ができそう」と思って採用してみたら、実はそうでもなかった。そんな経験はありませんか?また逆に、第一印象がひどく不愛想だと思っていたけれど、いっしょに仕事をしてみたらていねいに仕事をこなす人だったということもあります。第一印象だけで判断してしまうと、適材適所の機会を失うことにもなるので、よくよくその人の本質を見極めるように心がけておきたいものです。

CASE② 自分が他者からどう見られているかを意識する

ハロー効果は、他者から見たあなた自身の評価にも影響を与えています。ですから、他人からどう見られているか、またどう見られたいかを意識し、自分自身の行動を正していくことが重要です。特に商談の機会が多い営業職や、リーダーとしてチームを引っ張る人は、ぜひ実践してみてください。身振りや表情、話し方を意識するだけで、その効果を実感できることでしょう。

ハロー効果はよい方(ポジティブハロー効果)にも悪い方向(ネガティブハロー効果)にも働きます。人にはそういった傾向があるのだと良く理解し、うまく対処していくことが円滑なコミュニケーションに必要なのだと心がけましょう。

ピーク・エンドの法則

人は過去の経験に関して、もっとも感情が動かされた瞬間(ピーク)と、最後の印象(エンド)だけで全体を判定していると言われます。これが「ピーク・エンドの法則」です。例えばクライマックスがとても感動的な映画を見ると、前半が多少冗長であったとしても「よい映画を観た」と評価を下すのがその一例です。

CASE① プレゼン時にはピークのタイミングと締めくくりに注意

商談や会議で提案するときは、説明のどのタイミングでピークを持ってくるかを意識するとよいでしょう。あまり早すぎると後の説明で印象が薄れますし、遅すぎれば相手が興味を失ってしまうかもしれません。また、締めくくりには明るい展望を添えるなど、ポジティブな印象が残るようにすれば提案全体を好印象にすることができます。

CASE② 終わり方を意識してコミュニケーションを改善

会議はもちろん、セミナーや個別の面談時でも、参加者が前向きな気持ちで終われるように意識することで全体の印象を良くすることができます。会議であれば、新しい提案の可能性を全員で共有するのもよいですし、セミナーであれば参加者同士で「参加してよかった」と気持ちを共有する機会を作るのもよいでしょう。

「ピーク・エンドの法則」を活用して狙った効果を生み出すのは難しい面もありますが、意識するだけでも人間関係が好転する可能性は生まれます。第一印象に影響を与える「ハロー効果」と同じく、日常的に意識するようにするとよいでしょう。

ピグマリオン効果(期待効果)

ピグマリオン効果の図

他者から期待を受けると、その期待に応えようとして努力するため、結果として成果につながりやすくなります。こうした効果を「ピグマリオン効果」と呼びます。これはアメリカの心理学者ローゼンタールが提唱したもので、実際に小学生を対象にした実験などで一定の効果があることが証明されました。

CASE① 肯定的な声かけで部下の自信や意欲を引き出す

部下や後輩に指示を出すときは、「ちゃんとやれよ」とプレッシャーをかけるのではなく、期待していることを伝えるようにするとよいでしょう。期待に応えたいという心理が働き自主性が育まれるため、成果や信頼感の向上につながります。

CASE② 小さな成功体験を与える

成果だけでなく、過程や本人の努力もきちんと評価するとよいでしょう。評価されたことが小さな成功体験となり、よりモチベーションを高めるきっかけにもなります。また、期待だけを伝えるのではなく、アドバイスなどのフォローも必要です。成功を経験することで、自分の行動に自信が持てるようになるのです。

「ピグマリオン効果」とは逆に、期待されないことで成果を上げにくくなる現象を「ゴーレム効果」と呼びます。また人は、他者からの注目や関心が集まったときに高いパフォーマンスを発揮する傾向があります。これは「ホーソン効果」とよばれ、実験によって証明されています。ですから、適度に期待を伝え、関心をもっていることを示すことは相手のモチベーションを高める意味で有効です。
しかし、過度な期待は逆にモチベーションの低下につながる場合もありますので、その点は注意しましょう。

返報性の原理

「返報性の原理」とは、相手から受けた好意や敵意などのアクションに対して、「お返しをしたい」と感じる心理的効果です。「好意の返報性」「敵意の返報性」「譲歩の返報性」「自己開示の返報性」に分類され、好意には好意を返したくなり、敵意には敵意を返したくなるというわけです。

CASE① 日常的な声掛けや気遣いで信頼関係を構築

日常的な声掛けや気遣いで相手への配慮を示しておくと、相手にも配慮の気持ちが生まれますし、困ったときに助け合える環境にもつながります。また、そうした風潮が浸透していくことで職場やチーム内の信頼関係も高まります。意識的に声をかけるようにしましょう。

「返報性の原理」は営業活動などでも活用できるものですが、見返りを求めすぎると相手に下心を感じさせることになり、返報性の原理は働きづらくなります。また、高価な贈り物など、過剰な好意は相手に警戒心を与えることにつながりかねません。また、ネガティブな言動に対しても働くものですから、その点に留意して自身の行動を振り返ってみるとよいでしょう。

自己開示の法則

自己開示とは、自身の感情や価値観を他者に正直に伝える行為を指します。前項の「返報性の原理」でも少し触れていますが、自己開示をすることで相手にも「自己開示したい」という気持ちが生まれます。また、相手の警戒を解き、共感や親しみが生まれるため、相互理解が深まると言われています。

CASE① 自己開示がしやすい土壌づくり

リーダー職であれば、自身の失敗談や経験談などを話すと、警戒心が和らぎ、部下からの話題を引き出しやすくなります。また、趣味の話題なども共感にもつながり、話題が広がります。話しやすい雰囲気づくりが重要です。

CASE② 以後の話題のきっかけづくり

新人を紹介するとき、目標や興味のあることや出身地などを語ってもらうようにすると、以後の話題のきっかけになるでしょう。ほかのチームメンバーとも話題を共有できれば、そこから新たな話題へと広がっていくかもしれません。

信頼関係を築くためには、ある程度の自己開示は有効です。しかし、一方的な自己開示が過ぎると自慢と受け取られかねませんし、プライベートに関わる質問をすると、かえって警戒心を持たれることもあります。また、自己開示が苦手な人もいるので、相手の反応にも注意しましょう。

ジョハリの窓

「ジョハリの窓」とは、心理学で用いられるモデルの1つです。自己への理解を深めるために使われるもので、他者とのコミュニケーションをスムーズにする際に役立ちます。ジョハリの窓では、4つのカテゴリー(窓)を通して、自分自身から見た自己と、他者から見た自己の情報を分析していきます。

ジョハリの窓の図

この4つの窓で自分自身を捉え直すことで、自分と他人の認識のズレを理解、整理することが可能になります。

CASE① フィードバックで当人の自己理解を深める

「フィードバック」とは、「気づかない窓(盲点の窓)」について、客観的な事実を本人に伝えて、「開かれた窓(開放の窓)」へ拡張してあげる作業を言います。主観的な評価や指示ではなく、本人が気づいていない一面に気づかせてあげることを意識するとよいでしょう。

CASE② 定期的な1on1で信頼関係を構築

部下との個別相談でも、ジョハリの窓による診断を活用することができます。定期的に行うことで「気づかない窓(盲点の窓)」や「隠された窓(秘密の窓)」の領域を減らしていくことで、部下の自己理解が進むだけでなく、関係性が改善し信頼関係を築いていくことができます。

「ジョハリの窓」は、多くの企業で対人コミュニケーションや社内でのコーチング、部下のマネジメントなどに活用されています。やりかたもさまざまあり、一部の情報にあえて嘘を混ぜてそれを参加者で当てあう「嘘つき自己紹介」や、互いにインタビューを通じて相手の紹介を作成する「他己紹介」、webサイトを利用した方法などがあります。
ただし、自己開示が苦手な方もいますし、ある程度の信頼関係がなければ効果が出にくいため、自分や周囲に合ったやり方を模索するとよいでしょう。

社会的証明(集団行動の影響)

社会的証明とは、他者が行っている行動や持っている意見を基に、自分の判断や行動を決定する心理的現象を指します。先に説明した「バンドワゴン効果」「ウィンザー効果」と近しい考え方ですが、より広い概念と言えるでしょう。こうした心理的傾向は、社内の意識改革や行動改革に活用することができます。

CASE① ロールモデルを共有して、行動基準を示す

社内やチーム内で模範となる社員や成功事例を紹介し共有すれば、それが行動基準となって全体のパフォーマンス向上につながります。過去の事例なども参考にしやすい環境を整えるなども併せて行うとよいでしょう。

CASE② 社内レビューや評価コメントを活用

同僚の評価や推薦などを取り入れる仕組みを整えれば、正しい行動が評価される風土や信頼感が生まれます。また、新しいツールや業務プロセスなどの導入時に先行者のレビューを参考にできる環境を整えれば、導入がスムーズに進むでしょう。

「社会的証明」には「専門家の証明」「集団の証明」「友人・同僚の証明」「承認の証明」などの種類があり、適切に運用すれば職場全体の行動変容や導入促進に繋がります。
ただし、過度な使い方は偽証や操作的に見え、信頼を損ねるリスクもある点に注意しましょう。

人間関係を良くしたい方へ

ここまで人間関係を良くするための心理学テクニックについて見てきました。職場内やお客さまとの人間関係を円滑にしたい人や、信頼関係を築きたいと考えている方にとって、心理学への理解が有効であることはお分かりいただけたでしょうか。

  • 職場のコミュニケーションに悩みがある方
  • チーム内の信頼関係を築きたい方
  • 対人ストレスへの理解や対処法を学びたい方
  • 人に寄り添う力を高めたい方

これらに該当する方は、ぜひ心理学を学ぶことを検討してみてください。

まとめ ビジネスにも人間関係にも役立つ心理学を学ぼう

ここまで、営業、マーケティング/広報、人間関係にわけ、それぞれのシーンで使える心理学テクニックを見てきました。本記事で紹介した心理テクニックは、社内やお客さまとの信頼構築、さまざまな場面での意思決定、チームメンバーの行動変容などに役立てることができます。また、各項目で紹介した心理学の知識はその分野のみならず、幅広いシーンで活用できるもので、心理学がビジネスの上で大きな武器になることが理解できたのではないでしょうか。
しかし、こうした心理学の法則を表面的に理解しても、十分な効果を生み出すことはできません。それぞれの理論の背景や実験例などもしっかりと理解することで、より適切に応用することができるようになるのです。
職場で活躍したいと考えている方は、これを機に心理学を学んでみませんか?

大手前大学通信教育部での学び直し

大手前大学通信教育部では、働きながら心理学を学びたいと考える方に向けて、多様なニーズに応えるカリキュラムを整えています。専任スタッフのサポート体制も充実しており、自分のペースで無理なく学修を進めることができます。

  • オンライン中心の学習で、時間や場所にとらわれず学べる
    科目のほとんどは、オンライン。通勤中や隙間時間などを利用して、無理なく学修を進めていくことができます。
  • 基礎から応用まで心理学を幅広く学べるカリキュラム
    大手前大学通信教育部は、ビジネス系の心理学科目(色彩心理学/マーケティング心理学/カウンセリング心理学(※)/キャリアの心理学(※)/キャリアをつくる技法(※)
    ※スクーリング授業)以外にも多様な心理学の科目を学べます。

心理学基礎

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心理学概論 自分自身や周囲の状況・社会について、心理学の視点から分析・考察できるようになる。
心理学研究法 心理学における実証的研究法についての基本的な知識を身につけ、活用できるようになる。
心理学統計法 実験や調査によって得られたデータを適切に集計し、それらの集計結果を第三者にも分かりやすい形式で表現できるようになる。
行動の科学 心理学の興りから、現代心理学にいたるまえの多彩な領域への理解を深め、有機体と心理学との関係性を説明することができる。
心理学実験演習A 錯視や投影法などの心理学の実験実習に参加し、様々な実験を通して得られたデータの分析方法などの研究の基礎を修得する。
心理学実験演習B 性格検査などの心理学の実験実習に参加し、様々な実験を通して得られたデータの分析方法などの研究の基礎を修得する。

心理学各論

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対人関係論 対人関係で生じる様々な心理状態や対人行動について理解し、対人関係で生じるトラブルの解決や自らの行動改善ができる。
学習・言語心理学 学習心理学と言語心理学についての理論を理解し、自分自身に活用したり、他人に言語を教える際に効率的なプランを提示できる。
健康・医療心理学 家庭・学校・職場・地域における心理学的アプローチによる健康教育について考察し、自分の考えを述べることができる。
感情・人格心理学 人格の形成過程や類型、特性等について、また感情の理論や機序について理解を深める。
調査研究方法Ⅰ 社会調査の意義や基本的知識などを理解し、社会調査の企画立案から文献・資料収集・レポート作成などに必要な技術を身につける。
調査研究方法Ⅱ 社会調査の意義や基本的知識などを理解し、社会調査の企画立案から文献・資料収集・レポート作成などに必要な技術を身につける。
青年心理学 青年心理の特徴を示した理論を理解し、日常生活上の問題に関して心理学的に解説できる。
教育・学校心理学 児童・生徒の発達過程・パーソナリティ、学習、人間関係や集団心理の理論を身につける。
犯罪心理学 犯罪が発生する要因や犯罪者・被害者の心理を理解し、被害者の支援や犯罪を防止する環境整備などへの提案ができるようになる。
障害児・障害者心理学 障害分類や心理、障害児(者)教育の変遷について理解し、支援の方法について具体的な計画を立案することができるようになる。
精神分析学 精神分析の様々な理論を理解し、芸術・文学作品について精神分析の観点から作家や作品の分析ができる。
認知心理学 認知心理学の理論を理解し、自身の興味ある認知心理学的テーマに関して、実験計画を組み立て、予測される結果を明確に説明できるようになる。
文化心理学 文化と心の相互構成過程について学び、文化差や、それが生み出される環境の違いへの理解を深める。
臨床心理学 臨床心理学に関する理論や心の病の分類をはじめ、診療場面で使用される心理検査や心理カウンセリング、心理療法などについての理解を深める。
多変量解析法 多変量解析の手法を理解し、多変量データが与えられたときに適切な解析方法を選択でき、結論を導くことができるようになる。
質的調査法 質的調査の考え方や基礎的な知識を習得し、調査の目的に合わせて適切な調査技法と分析方法を組み合わせることができる。
産業・組織心理学 人間行動と心理に関わる現実の問題に関して、どのような観点からアプローチし、解決するべきかという、具体的な方針を示すことができる。
発達心理学 ヒトの発達段階や、発達心理学の重要な理論についての理解を深める。
ひとと動物の心理学 ひとと動物の関係に関する知識を習得し、ひとと動物の関係について、心理学的知識を用いて考察する。
社会・集団・家族心理学 対人関係、集団、群集、家族など、その特徴や傾向、そこで生じる心理や行動について理解を深める。
認知行動療法 自身の興味のある認知心理学的テーマに関して、自分なりの実験計画を組み立て、その目的や予測される結果を明確に説明できるようになる。
臨床心理学実習 臨床心理学の基本的な理論や技能について学び、自己理解および他者理解を深める。
カウンセリング心理学 カウンセリング心理学の定義、起源、歩みを学び、カウンセラーに必要な基本的な態度や課題、留意点について理解を深める。
心理学総合演習 主な心理学の理論をはじめ、心理学についての一通りの基本について理解を深める。
  • 認定心理士などの資格取得もめざせる
    大学卒業資格と合わせて、認定心理士の資格取得も可能なコース設定。新たなキャリアが拓ける可能性も広がります。

※認定心理士の資格取得には、スクーリングの受講が必要です。

受講生の声

多角的な学びを実現よりよいカウンセリングに

Yさん
職業:会社員
入学・卒業年度:2025年3月卒業

産業カウンセラーやキャリアコンサルタントとして社内でさまざまな面談を行う中、人の心についてもっと知りたいと思い、仕事をしながら心理学を学べる大手前大学へ。大学が掲げる“STUDY FOR LIFE(生涯にわたる、人生のための学び)”が、私自身のモットーと同じであることに運命を感じ、ビジネス・キャリアやライフデザイン科目も学んでいます。
心理学の授業はどれも面白く、先生の熱意を直接感じられるスクーリングは内容が濃くてやみつきになります。仕事との両立は大変ですが、学修アドバイザーの方が相談に乗ってくださったり、仕事の状況によって試験を次のクールに回すことができたりしてとても助かっています。
何かを始めるのに遅いことはないと身をもって感じ、社内の面談でも相談者の悩みを多角的に捉えられるようになりました。