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【卒業生インタビュー】日本語教員として新たなキャリアを切り拓く
2024年4月より新たな国家資格である「登録日本語教員制度」が始まり、いま、日本語教員をめざす人が増えています。しかし、「国家資格=難関」というイメージもあり、「働きながら資格取得は大変そう」「資格に興味はあるけれど自分にはムリだろう」と諦めてしまっている人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、実際に登録日本語教員試験に合格された方の体験をお聞きし、体験記の形にまとめました。仕事や家事と学修をどのように両立したのか、どのように学修を進めたのか、そして日本語教員として働く魅力とはどのようなものなのか。
日本語教員に興味のある方は、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
● ご回答者
Mさん(40代)
大手前大学通信教育部 2025年3月卒業
公立小学校 日本語教室/日本大学大学院総合社会情報研究科博士前期課程
Mさんは40代で大手前大学通信教育部に編入学し、仕事・家事・育児と両立しながら卒業。その後、登録日本語教員試験に合格し、現在は公立小学校で外国にルーツのある子どもたちへの日本語指導に携わっています。
本記事では、学修時間の確保方法や試験対策、教育実習の準備方法などを詳しく紹介します。
20代の頃になりたかった憧れの日本語教員をめざして
私は20代の学生時代に憧れていた日本語教員になるために、40代で勉強を始めました。日本語教育能力検定試験を合格しましたが、いざ日本語教育関連の求人を見ると、求められる条件として、大学卒業時に取得できる学位(学士)や所定の科目を修めた証明となる主専攻・副専攻修了を要件としている職場が多いことがわかりました。その要件を満たすため、大手前大学通信教育部に3年次に編入しました。
そんななか、国家資格である『登録日本語教員』の制度を知って、すぐに試験を受けようと思いました。しかし、『登録日本語教員』になるための日本語教員試験がスタートした年には、私はすでに大学4年生となっていました。家事や育児、仕事もある中で、さらに登録日本語教員の勉強をするための時間を捻出できそうにありません。そこで、まずは大学を卒業し、その後に働きながら勉強して資格試験に挑戦することにしました。
通信制大学での学び
通信制の学修ということでしたが、オンラインで実力がつくかどうかといった不安はありませんでした。卒業するためには必要なことですので、実力はつけるしかないと思いました。仕事や家事との両立には多少不安はありましたが、日本語教員になるためには、大学を卒業することは必須。そこで、仕事や生活と両立できるように生活を変えました。
オンライン授業
大手前大学通信教育部のオンライン授業は、独自のテキストがとてもわかりやすく、電子データだったため、復習や必要な情報を検索するときに便利だと感じました。あえて難点をあげるなら、シラバスの文字が小さかったこと。シラバスは単位修得試験の方法や各回の学修内容・課題など、確認する機会もよくあるため、読みやすい文字サイズになると、さらに使いやすいと思いました。
学修スケジュール
通信制での学びは自分で学修時間を調整でき、マイペースに進めることができますが、レポートの〆切やテストの日程は決まっています。自由に楽に勉強できるわけではありません。自分や家族の体調不良等、勉強できない日もあるため、「スケジュールの前倒し」を意識しました。
大手前大学のeラーニングシステム「el-Campus」は、授業を履修している進度が見られる仕組みになっているので、進捗管理がしやすく助かりました。自分が今どの段階にいるのかが分かって使いやすかったです。
他の学生との交流
大手前大学には、eラーニングシステム「el-Campus」の公開掲示板や学生向けのイベントなど、学生や卒業生が自由に交流できる仕組みがあります。公開掲示板は、とても参考になりました。現職の日本語教員として働く在校生や卒業生も参加されているので、先輩方のコメントから教育実習での雰囲気や様子を知ることができます。教案の書き方や、当日の学習者の反応などについてもイメージが湧きました。求人に関する情報交換の場ともなりますし、その他にも自分にない視点に気付くことがあるので、交流はした方がいいと思います。
家事や仕事との両立の実際
大学入学当時はパート勤務をしており、一方で中学2年の長男と小学5年の次男の子育てもしていました。そんななかで学びを進めるために、気力体力を温存できるように家事のやり方を変えました。掃除は何かのついでに行うことにし、洗い物は1日1回にまとめるなど家事の効率化を図りました。また、仕事はできるだけ家に持ち帰らないようにしました。メールやLINEの対応は1日1回。どこかで時間を作って、返信などはまとめて終わらせるように心がけ、20:00から翌6:00まで通知音は鳴らさないようにしていました。
学修時間は、平日であれば20時半から2時間以上を充てていました。レポート課題があるときは、平日に草案を書き、休日に校正し、さらに一日空けた後でもう一度確認し提出しました。
20代と比べて記憶力が落ちていることもあり、読解・復習にかける時間は増えました。復習しようと開いたノートの内容が、初見かと思うくらい記憶に無いということもありました。そこでAIを使い、記憶と理解を助けてもらいました。勉強したことや、わからないことなどを、AIを使って日々記録をしておくと、私の「なんだっけ?」という質問に答えてくれます。工夫をしながら進めていきました。
在学中のリフレッシュ方法
学修に疲れたときは、寝てしまうのが私のリフレッシュ方法。夜に限らず、仕事から帰ってきてからも、30分から1時間程度寝て、体力を回復させてから勉強や家事をしていました。
モチベーションを保つ秘訣
私は親でもあるので、子どもたちに恥じないよう、「最後までやり抜く意地」を持って、学生生活を送りました。もちろん疲れてしまうことはありましたが、大学卒業後に小中学校に日本語教員として勤めたいと考えていたので、卒業は通過点とし、予定通り卒業するものとして就職活動もしていました。卒業後の目標があると、モチベーションの維持に繋がると思います。
日本語教員をめざす学生が大学に進むメリット
大学の授業で印象に残っているのは、「日本語教育と音声」と「日本語教育文法Ⅱ」です。特に「日本語教育と音声」では、日本語学習者の音声を聞いて特徴を分析し、レポートを作成しました。その際に事例となる学習者をYouTubeで探したのですが、母語によって日本語の誤用にも特徴があることがよくわかり、とても印象に残っています。
日本語教育以外の科目では、「教育・学校心理学」での学びは、小学校の現場で、子どもの心理と行動を考える際に活かされています。また、「行動の科学」で学んだエリクソンの漸成発達理論(生涯にわたる人間の発達を8つの段階にわけ、各段階に特有の心理社会的課題があるとする理論)は、私自身の人生を振り返り、これからの目標を具体的に考える時に役立っています。
20代と違い、目標がしっかりあったため、学びたいという気持ちで学べる楽しさは、日常生活における気持ちも前向きにしてくれました。また、日本語教育だけでなく、他の科目を学べたことで、日常においても、様々なことに興味関心を持って生活するようになりました。
教育実習
教育実習では、事前準備として自分なりに教案を作ります。教案は、教師の発言や行動と、学習者の反応の2つについて、内容を書いていきます。例えば教師の欄に、「今日は、教科書66ページ、第8課です」と台詞を書き、板書する内容も書き入れます。教師「これは何ですか」とセリフを書いたら、学習者の欄には「桜です」、「花です」といった予想される発言を書きます。シナリオを描くようなイメージで具体的なやりとりを想定し、それを繰り返しながら授業を組み立てていきます。私は、教育実習前に自分で作った教案を元に、一人で授業の練習を何度も行い、その様子を動画で撮影しました。一人で模擬授業をしてみることで、時間配分の適切さや、話す速度も確認できます。教案を作りすぎず、まずは一人授業をして、修正していくといいと思います。
シナリオができたら、他の学生と数名のグループになり、学生数人の前で模擬授業をします。そこでは、予想していた反応と違ったり、予想より早く終わってしまったりと、様々なことに気付かされます。その気づきをもとに、さらに教案を作り直します。
そして、実際に6名の留学生の前で授業を行い、先生や他の学生からいただいたご意見を元に、さらに教案を書き直し、次の模擬授業に臨みます。最初は人前で授業することが怖かったのですが、いろいろなアイデアを取り入れ、やり方を工夫することで、不安は小さくなっていきました。教育実習1日目と5日目では、驚くほど変わった教案ができあがります。その事実が自分が成長していることを実感させてくれます。
先生方は未熟な私たちの授業にダメ出しをするようなことはなく、例えば漢字圏の学生とそれ以外の学生がいるときの工夫など、あくまでより良い授業になるようなアドバイスをくださるので、その時の自分の精一杯を出すことで、大切な気づきを得られると思います。先生の温かいご指導をもとに、できるようになっていく過程は、気持ちを前向きにさせてくれます。教育実習を通じて、「何事も工夫次第」と思えるようになりました。
日本語教員試験への道のり
大手前大学通信教育部は登録実践研修機関・登録日本語教員養成機関として文部科学大臣の登録を受けているため、日本語教員試験については日本語教員試験(基礎試験)と実践研修が免除されます。日本語教員試験の対策において、応用試験の対策のみだったため、負担軽減になりました。
私が日本語教員試験に挑戦するときは、大学を卒業し、公立小学校に勤務していましたが、在学中に日々の学修スケジュールは身についていたため、在学中と同様に、20時半から勉強をして対策を進めていました。教材は、日本語教育能力検定試験の過去問題集9年分に加えて、登録日本語教員用の対策本を1冊購入(途中、本番の問題とは少しずれている気がして中断)、さらに動画サイトの日本語教育能力検定試験の音声問題のチャンネルも活用しました。当時は日本語教員試験の問題集が少なかったため、日本語教育能力検定試験の過去問を教材にして対策しました。
この当時のリフレッシュ方法は出かけること。日本語教育とはまったく違う環境で過ごすことで、机に向かった時に「さぁやるぞ」という気持ちになりました。
Mさんの学修スケジュール
私は日本語教育能力検定試験の問題を基本に対策しましたが、実際の日本語教員試験の問題は検定試験の問題とは少し傾向が異なりました。しかし、基本的な知識を確実にすることで対応できました。また、音声問題は毎日繰り返し勉強し、耳を慣らしておいて良かったと感じました。日本語教員試験の音声問題は、1つの問題につき1回しか音声が流れません。聞き漏らすと焦ってしまいますが、何度も問題に取り組むことで、聞き漏らしても焦らず次を聞くことで全体を理解する訓練ができたと思います。本番と同じ制限時間・問題数で複数回練習したことで、時間配分で焦ることなく回答できたのも良かったと感じています。今はいくつも対策本も出ているかと思うので、最新のものを2冊ほど読めると問題傾向もわかってくるのではないかと思います。
試験当日の会場には、長時間の試験に挑めるよう、快適な場を作るために、座布団やひざ掛けも持参。飲み物もお茶とコーヒーを持参し、眠気が思考を邪魔しないように対策しました。無事に合格することができ、日本語教員の求人の条件に必ずと言っていいほど記載されている「登録日本語教員」になれたと思い、ほっとしました。「私は日本語教員です」と言えることは、自信につながりました。
日本語教員の仕事
現在は公立小学校に勤務し、4か国(インドネシア、フィリピン、ブラジル、中国)出身の9名の児童を受け持っています。教育実習での授業づくりと実践、日本語そのものに関する知識、日本語教育の知識は、現場で役立っています。子どもは急に成長する瞬間があります。そこに立ち会えた瞬間、日本語教員をやっていてよかったと感じます。カタコトだった日本語から、助詞が入り、単文から複文を使いこなしていく学習者の成長を一緒に感じられることは、日本語教員の醍醐味だと思います。
現在、小学校の中では、日本語教員という職業自体があまり認知されていません。「日本人であれば日本語を教えられる」「50音を教えればいい」といった誤解が今もあり、日本語教員は、学習支援の先生と同じような立場です。私の勤務する地域の公立小中学校でも、小学校や中学校の教員免許を持った教員が日本語指導を担当しており、日本語教育を専門に学んだ経験はない場合がほとんどです。そのため、例えば格助詞「へ」と「に」の違いや、形容詞と形容動詞の活用の違いなど、区別すべき内容を混ぜたまま提示することが起こります。また、日本人の子どもは新出漢字の書き取り練習を重視しますが、それではその漢字を使う場面がわかりません。そこで日本語学習者の場合は、漢字学習は文章の中で教え、文章全体の書き取り練習を重視します。このように、日本語を外国語として教える視点が必要であり、ここに日本語教育の必要性があると考えています。
文部科学省の調査によると、日本語指導が必要な児童生徒は令和7年度で84,759人と過去最多で、令和5年度から22.6%増えています。この増え方が続けば、日本語指導は一部の学校の特別な対応ではなく、どの学校でも必要になっていくでしょう。すると、指導する場と指導者をどう確保するかが課題になります。
また、必要性の中身も変わっていくのではないかと思います。これまでは日本語指導ができる人を確保することが中心でしたが、これからは日本語教育を専門に学んだ人が担当することが求められるようになると考えています。登録日本語教員という制度ができたのは、その表れだと思いますし、そのような時代になることを期待しています。
※参考:「令和7年度 日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査の結果」(文部科学省ホームページ/https://www.mext.go.jp/content/20260525-mxt_kyokoku-000049811_01.pdf)。
まとめ 働きながら登録日本語教員をめざせる大手前大学通信教育部
実際に登録日本語教員の資格を取得された方の体験を通じて、家事や仕事と学業の両立、学修の進め方などのイメージを持つことができましたでしょうか。日本語指導が必要な子どもたちは年々増加しており、日本語教育の専門性を持つ人材への期待も高まっています。
「今からでは遅いかもしれない」と感じている方こそ、まずは資料請求や説明会への参加から一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。



